小学校一年生のとき、先生に「おてんば一等賞」という不名誉な賞をもらったことがあった。まあ、確かに生傷が絶えることは一年中なかったし、男の子と対等に渡り合える女子だったので、おてんばで済むならある意味褒め言葉かもしれない。
その頃、当時一緒に遊んでいた友達と探検ごっこをするのが流行っていた。普通の遊びでは物足りず、わざわざ山中の道なき道を通って隣町に行ったり、目をつぶって町内の地図に載っている名前を差し、その家にピンポンダッシュに行ったりと、スリリングな遊びを好んだ。
その中で今でも忘れられないのが、近所にある廃墟に忍び込んだことだ。そこは昔工場だったらしいのだが、窓ガラスは割れ壁にはヒビが入りと傷み放題だった。ドアに南京錠がかかっていたものの、二人がかりなら小学生でもドアを外すことができた。私は一緒に行った友達と一緒にドアを外し、4人全員が中に入ると急いでそのドアを閉めた。ちょうど初夏だったので外は明るく日なたにいると汗ばむほどの陽気だったのだが、中は窓からの日差しがあるにも関わらず暗くてひんやりとした空気に鳥肌が立ったことを覚えている。みんなでキャーキャー悲鳴を上げながらも奥に進んでいくと、突き当りに部屋があり、そこには事務机や椅子が雑然と置かれていて、さらにその奥には金庫らしきものがあった。私たちは、「もしかしたら、まだお金が残っているかもね」なんて言いながらその金庫を開けてみることにした。大人になった今なら、潰れた工場の金庫にお金なんて残っているはずはないとわかるけれど、小学生だった私達の胸は高鳴った。カギは開いていた。友達が金庫に手をかけてゆっくり開けてみると…そこにはゴム風船のようなものがいくつも入っていた。「何でこんなところに風船が入っているんだろうね?」小学生だった私達にはそれが何だったのか、知る由もなかった。幼い頃の思い出である。